パテントコラム

2021年12月

【Topic.1】オプジーボ訴訟 高額和解で決着

(2021年11月13日 日本経済新聞)

オプジーボとは、本庶佑氏がノーベル賞を受賞するきっかけとなった癌の治療薬です。小野薬品が本庶氏からライセンスを受けて商品化し、今までにロイヤリティ収入を含めて1800億円もの関連売上があるそうです。そのような中、小野薬品が米メルクとの特許侵害訴訟で得た和解金の分配を巡って本庶氏との間で見解が対立し、裁判所は、ライセンス契約に関する「解決金」を織り込んだ形で和解を勧告しました。そもそもライセンス契約があるのにこうして揉めることになったのは、メルクから得た分配金については口約束しかなかったことや、ライセンス料が少なすぎる(売上げの0.5%と、他社から受け取るロイヤリティ収入の1%)ということに原因があったようです。今回の和解では、ライセンス料率は据え置きとされましたが、本庶氏に支払われる50億円の一部が紛争の「解決金」に当てられたとのことですので、ライセンス料率を変更したに等しいとも言われています。また、京大に設立される「小野薬品・本庶記念基金」に230億円が寄付されることにもなり、この計280億円の和解金をもって全面解決となりました。発明の対価としては過去最高額になりましたが、世界のトップアスリートの年棒を考えると、ノーベル賞を取れるほどの発明となれば当然、いや、むしろまだ少ないのかもしれません。

【Topic.2】ユーチューブ動画テロップ 転載は「著作権侵害」

(2021年11月24日 日本経済新聞)

ユーチューブ動画のテロップをインターネットのブログに無断転載されたことが「言語著作物」の侵害に当たるとして情報開示を認める判決が出されました。原告は「感動アニマルズ」という自身のユーチューブチャンネルに「幼いライオンを救った男性。野生戻した1年後の再会に涙が溢れる【感動】」とするタイトルの動画を投稿。これに対し、被告は、この動画を紹介する自身のブログで「幼い子ライオンを救った男性。野生に戻した1年後の再会結果は!?」というタイトルの記事を掲載しました。侵害とされたのはこのタイトルのことではなく、被告のブログに原告の動画のテロップがそのままに近い形で使用されたことにあったようです。著作権法上は「引用」であれば侵害にならないわけですが、主と従の関係が逆転し「引用」の度を越えたのではないかと思われます。誰でも気軽に投稿できてしまうこの時代ですので、小さい頃からの知財教育を拡充させる等して、その辺りの「感覚」を養う場も必要でないかと感じました。