パテントコラム

2022年1月

【Topic.1】著作物利用、一元窓口で 文化審議会 権利者不明でも対応

(2021年12月3日 日本経済新聞)

「さまざまな著作物を二次利用しやすくする仕組みを検討している文化審議会の小委員会は2日、音楽や映像など分野にかかわらず、利用者からの申請や相談を一元的に受け付ける窓口組織を創設するとした中間報告をまとめた。著作権者が不明な場合でも、利用に向け一元窓口が対応する。」とのことです。

この一元窓口は、著作権者や管理団体が明確な場合は利用者を取り次ぎ、著作権者が不明な場合や連絡が取れなかった場合は窓口が探索して著作権者の意思を確認するとのことです。

このような窓口ができれば、著作物を二次利用したい利用者には便利です。ただ一般人がインターネットで公開した映像作品や音楽なども対象として各分野の著作権情報を網羅したデータベースを新たに構築するそうですので、AIを利用してもデータベースの構築には膨大な手間と時間とがかかりそうです。

【Topic.2】つながる車で特許紛争 米社 トヨタなどを提訴 通信部品

(2021年12月9日 日本経済新聞)

「車載通信部品が特許を侵害しているとして米特許会社がトヨタ自動車やホンダなどを米裁判所に提訴したことが8日分かった。通信部品の特許を巡り日本車メーカーが訴えられるのは異例。十数件の特許が対象で短距離通信で重要な特許も含まれる。あらゆるモノがネットにつながる『IoT』など通信の活用は広がっており、他の企業にも訴訟リスクが及び可能性がある。」とのことです。

訴えたのはインテレクチュアル・ベンチャーズ(IV)で、IVは、自社で研究開発する以外に、傘下のファンドを通じて特許を買い、ライセンス料収入や特許訴訟の和解金で稼ぐ特許管理会社で、米マイクロソフトの元幹部が設立し、IT関連で7万件以上の特許を持つそうです。一頃話題になった「パテントトロール」みたいですが、IT関連であるのが厄介で、今後高速通信規格「5G」が普及していくのに伴い、このようなIT関連の特許による紛争は、自動車に限らず他の分野にも広がっていくことは大いに予想されます。

【Topic.3】日鉄、三井物産も提訴 トヨタ・宝山の取引巡り 鋼板特許侵害で

(2021年12月24日 日本経済新聞)

「日本製鉄がハイブリッド車など電動車のモーター材料となる鉄鋼製品で自社の特許権を侵害されたとして、三井物産を東京地裁に提訴したことが23日わかった。日鉄は10月にトヨタ自動車と中国鉄鋼大手、宝山鋼鉄を同じ鉄鋼製品の特許侵害で訴えている。両社の取引に三井物産がかかわっているとみている。」とのことです。

このような商社を訴える例はまれですが、特許侵害には「実施行為独立の原則」があり、流通段階での個々の実施行為はそれぞれ独立して侵害の有無が判断されますので、特許法上問題はありません。

ただこのように製品の供給網も標的となってくるようになると、企業には知財リスクへの一層の注意が求められることになります。

【Topic.4】特許公開制限、企業に補償 経済安保法案 基幹インフラを審査

(2021年12月26日 日本経済新聞)

「政府が2022年の国会に提出予定の経済安全保障推進法案の骨格がわかった。軍事転用の恐れのある特許の公開を制限し、代わりに出願者や企業に金銭補償する。情報通信や電力など基幹インフラを担う大企業を対象に安保上問題になる機器を導入しないよう政府が審査する制度も設ける。」とのことです。

対象分野は、核兵器開発に繋がるウラン濃縮技術等の軍事関連や量子等の先端技術になるようで、審査のため国家安全保障局(NSS)や防衛省等の省庁横断でチームを作るそうです。

国が補償するライセンス料は、既存の同類の特許で得られる収入の平均額等から国が算定するそうですが、実際に得られるライセンス料との間に乖離が生じると企業から不満が生じそうです。

基幹インフラに対する審査制度は、情報通信や電力、ガス、金融等の事業者が、コンピュータサーバ等の重要な設備を新たに導入する際、安全保障上懸念のある外国製品(特に中国製品)が使われていないかなどについて、国から事前審査を受けるようにする制度です。対象となる事業者は国が指定する大企業となるようです。