パテントコラム

2021年2月

【Topic.1】中国、罰金・賠償引き上げ

(2021年1月25日 日本経済新聞)

中国が企業向けに法規制を強化している、との記事が掲載されています。記事によると、中国では2021年にも独占禁止法が改正される予定で、その改正案が公表されたとのことです。企業結合審査違反の罰金額の上限の引き上げなどが含まれるようですが、この記事に並んで中国の特許法に相当する「専利法」の改正についても紹介されています。改正点はいくつかありますが、権利者保護の強化が大きなポイントの一つであり、具体的には、故意侵害に対し、裁判所は賠償額の5倍までの懲罰的賠償を科すことが可能となり、また、賠償額の確定が困難な場合に、最大500万元の賠償額を裁判所は科すことができるとのことで、現行の100万元から5倍まで上限が引き上げられるようです。さらに地方の知財管理当局(行政局)に侵害事業者への立ち入り権限を与えるなど、侵害の摘発体制が強化されます。なお、今回の改正法には、新規性喪失の例外の拡充、開放特許制度の創設、部分意匠制度の創設、意匠存続期間の延長など重要な改正も含まれています。改正法の施行は、2021年6月1日とのことです。

【Topic.2】特許権の信託 パソナが参入

(2021年1月15日 日本経済新聞)

パソナグループのパソナナレッジパートナーが、株式会社パソナ知財信託を設立し、日本で初の専門信託会社として1月18日から業務を開始するとのことです。業務内容は、信託を専門に扱うとのことで、出願書類の作成及び提出、中間処理や権利維持などの管理も行い、調査業務、特許出願支援などを行うパソナのグループ会社であるパソナナレッジパートナーと共に、出願前調査から、知的財産の権利化、運用や権利活用をパソナグループとして一貫で行うとのことです。

ところで、弁理士でない者が特許出願代理業務を行うことについて疑念をもち、調べたところ、信託制度によれば、特許を受ける権利を有する者がその権利(信託財産)を信託すると、特許を受ける権利は受託者に引き渡され、受託者は出願人として出願手続を行うことができるようです。そして、一定の目的(信託目的)に従い,受託者(自身)または第三者(受益者)のために,受託者がその財産を管理処分するという仕組みのようです。従って、株式会社パソナ知財信託は、特許を受ける権利の所有者からその権利を信託された場合、自身が出願人となって出願手続を行うことが可能ということですが、弁理士としては少し複雑な思いです。