パテントコラム

2022年3月

【Topic.1】機密漏洩対策、企業に義務

(2022年1月20日 日本経済新聞)

政府は今国会に提出する経済安保法案の骨子をまとめたとのことです。法案は、①特許出願の非公開制度、②供給網の強靭化、③先端技術の官民協力、④基幹インフラの安全性の確保、で構成され、これらの4項目とも技術の振興と流出防止という攻守両面があり、政府が補助金で重要技術の投資を後押しし、企業には漏洩対策の義務付けという守りを求めるとのことです。特許の非公開制度について具体的には、国が審査して「安全保障上極めて機微」と判断したものに限定して非公開を求め、企業には想定される特許収入を補償し、一方保全義務に違反した場合の罰則も検討するようです。日本で公開された特許を使って他国やテロ集団がサイバー攻撃などを行う懸念もあることから、特許の非公開制度により先端技術の流出を防ぐことを目的としています。ただ、特許が公開されないと、他国で同一特許が成立する可能性もあり、また企業にとっては経済活動への国の関与が増すおそれもあり、経済やイノベーションへの影響についても検討の必要がありそうです。

【Topic.2】フリマアプリ「#」にご用心

(2022年1月20日 日本経済新聞)

「フリーマーケットアプリで「♯」に続けて商品名を表示するハッシュタグ(検索目印)を使って類似品を宣伝する手法が後を絶たない。ブランドをかたったタグの使用を商標権の侵害と認める司法判断があったが、運営会社の対策が追いつかない」とのことです。ここで言及されている司法判断とは、2021年9月の大阪地裁の判決です(令和2年(ワ)第8061号)。被告はハンドメイドの商品等を自己のサイトで販売していた個人ですが、その際,個別の商品の紹介ページに,検索用のハッシュタグを付した「#シャルマントサック」(「シャルマントサック」は他社の登録商標)の表示をしていたところ、商標権者が、商標権侵害を理由として提訴しました。裁判で、被告は,掲載商品が被告自ら製造するものであること,「シャルマントサック」等タグ付けされた文字列は商品そのものを示すものではないことを主張しましたが、判決では、ハッシュタグには表示された商品に関心がある利用者を誘導する機能があることから、「#」のあとに「シャルマントサック」の文字を付す行為は商標的使用であり、前記商標権を侵害するとの判断がなされました。

フリマアプリは個人間の取引という位置づけのため、法律が整備されていない部分も多く、対策は現状では不十分ですが、自分の商品の宣伝のために他社のブランドを利用したタグの安易な使用に対して警鐘をならした判決といえます。