海外での特許権について
日本で取得した特許権の効力は日本国内でのみ有効です。外国で特許権を取得したい場合には、各国の特許庁に対して出願するなどによりそれぞれの国あるいは地域(欧州など)で権利を取得する必要があります。出願方法としては大きく分けて以下の2つのルートがあります。
直接出願の方法(パリルート)
日本の出願から1年以内に条約上の優先権を主張して各国に出願する方法です。
「工業所有権の保護に関するパリ条約」は、最初の出願から1年以内の外国出願は、新規性などの判断時期を最初の出願時とするとの主張を認めています(優先権)。従って、外国出願を行う場合、日本出願日(優先日)から1年以内にパリ条約上の優先権を主張して行うことが多いと言えます。パリルートでは外国出願時に出願国の事情も考慮した出願準備が可能ですが、一方、日本出願日から1年以内に外国での出願書類を準備する必要があります。そのため、数カ国に出願を行う場合は、翻訳なども含め準備が煩雑になりますので早めに準備を開始することが必要です。
国際出願制度を利用する方法(PCTルート)
PCT(特許協力条約)に基づく国際出願を行い、設定された期間内に権利取得を希望する国の特許庁に係属させるための移行手続を行う方法です。
PCT出願(国際出願)は、日本特許庁あるいは世界知的所有権機関(WIPO)に出願書類を提出して行うもので、国際出願日が移行国の出願日と見做されます。日本語での出願も可能ですが、その場合、移行時あるいは移行後に移行国が定めた言語に直訳した翻訳文の提出が求められます。移行期間は、通常、優先日より30ヶ月または31ヶ月(例外もあります)あり、国際出願時に移行する国を決める必要はありません。移行期限までに権利取得を希望する国を決定し、所定の手続きを行うことにより移行国の特許庁に係属し、その国での審査の対象になっていきます。
海外での商標権について
日本で取得した商標権は日本国内にしか効力は及びませんので、外国で商標を使用したい場合はそれぞれの国で権利を取る必要があります。全世界に効力が及ぶ世界統一商標という制度はありませんが、各国での権利取得の手続を一本化する制度(国際登録制度)が整っています。
外国で商標権を取得する方法としては、それぞれの国に直接出願する方法と、この国際登録制度を利用する方法の大きく分けて2つの方法があります。
直接出願の方法
日本の弁理士資格では、海外での出願を代理することができません。国ごとに代理人となる資格が必要です。そのため、出願対象国の弁理士や弁護士などの代理人に対し、当該国への商標出願を依頼して権利化を目指します。株式会社イシックスが、かかる海外への直接出願の仲介手続を行わせていただきます。
それぞれの出願に提携の現地代理人がついてくれるため、タイムリーな情報提供ときめ細やかなサービスを受けることができるのが最大のメリットですが、現地代理人の費用がかかる点がデメリットと言えます。
国際登録制度を利用する方法
マドリッド協定議定書による商標の国際登録制度のことで、略して「マドプロ出願」などと言われます。日本における登録商標をWIPO(国際登録機関)に国際登録しておいて、その国際登録を指定国(保護を受けるべく指定した国)での審査を経て登録を目指します。
マドプロ出願は石田国際特許事務所が代理人となって行うことができますので、国ごとに現地代理人を立てる必要がなく、スムーズに登録へと進む限りにおいては、マドプロ出願の方が費用的に安くあがります。多くの国を指定するにつれ費用的な差異は直接出願と比べて顕著になりますが、マドプロ非加盟国(台湾や香港など)を指定することはできませんので、そのような国には直接出願するしかありません。
なお、国際登録商標を持っていれば、必要な時に指定国を追加することもできます(これを「事後指定」といいます)。