特許の取得

特許とは

特許とは、登録された発明につき、一定期間の独占排他的な実施が認められるものをいいます。特許は、発明を公開した者に対し、その公開の代償としてなされます。
発明とは、特許法2条1項に定義(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)がありますが、ごく簡単にいえば新規で有用な技術のことです。但し、「自然法則を利用した」とあることから、人為的な取り決め(例えばカードを用いた遊び方)や人の手技(ボールの投げ方等)は発明に該当しません。
発明には、物の発明、方法の発明、物を生産する方法の発明があります。プログラムや物質は物の発明に該当します。

特許権とは

特許権とは、発明を独占排他的に実施できる権利をいいます。特許権を得る(特許を受ける)には、特許庁に対し特許出願をし、特許庁審査官による審査を経て、特許権の設定の登録を受ける必要があります。
特許法では先願主義(特許法39条)を採用していますので、同一の発明についてそれぞれ別々の人が出願した場合、出願日が先となる出願のみが特許を受けることができます。発明の先後は関係ありません。

存続期間 特許権の存続期間は、出願日から20年です(特許法67条)。但し、特許権は設定登録日から発生し、その存続期間は出願日から最長20年です。年金を納付することによって存続期間中の権利を維持することができます。
特許権の範囲 特許権の範囲、すなわち特許発明の技術的範囲は、特許出願書類の一つである「特許請求の範囲」の記載で定まります(特許法70条)。よって、自己の製品が他人の特許権に抵触するか否かは、特許請求の範囲と比較することにより判断する必要があります。
「特許請求の範囲」の解釈が不明確な場合は、他の出願書類である「明細書」及び「図面」を参照します。
特許権の機能 特許権の機能として代表的なものは、技術の差別化です。特許を受けた発明(特許発明)は、他人を排除して独占的に実施でき、特許発明に係る技術を利用した製品につき特許権者のみが供給するようにできます。
また、特許発明の実施権(ライセンス)を他人に付与して、ライセンス料収入を得ることも可能になります。
そして、仮に他人が実施権なく特許発明を業として実施し、特許権が侵害された場合には、特許権者は、侵害行為を停止させるためにその他人による特許発明の実施の差止を請求したり(特許法100条)、損害賠償を請求したり(民法709条、特許法102条以下)することができます。

特許出願手続の流れ

1調査
特許出願を行う前に、同じ発明あるいは似た発明が既に出願あるいは特許となっているかを事前に調べるものです。

4出願公開
特許庁では、特許出願がされると、出願日から1年6月後に原則として全ての出願内容を公開公報によって公にします。重複研究や重複出願を避けるためです。

5審査請求
特許庁に対して出願に係る発明について審査をしてもらうように請求する手続です。出願日から3年以内であればいつでも行えます。特許庁では、出願人からこの審査請求が行われないと実体審査を実施しません。よって、出願は出願の日付順ではなく、審査請求がされた順に審査されます。

7拒絶理由通知
審査官が実体審査を行い、同一発明あるいは似た発明に係る刊行物が発見された場合等に、このままでは特許が受けられない旨を出願人に知らせる事前予告通知です。出願人は、拒絶理由に対して、意見書で反論したり、補正書で出願内容(主に特許請求の範囲)を補正したりすることができます。

9特許査定
実体審査の結果、審査官が、拒絶理由が発見できない、あるいは出願人から提出された意見書や補正書等によって拒絶理由が解消されたと判断した場合に行う最終処分です。出願人が3年分の登録料を納付すると特許となります。

14拒絶査定
実体審査の結果、審査官が拒絶理由が解消されないと判断した場合に行う最終処分です。出願人は、これに対して不服がある場合、審判請求を行って争うことができます。審判請求が行われると、3名又は5名の審判官(合議体)によって審理されます。

17審決
審判段階の最終処分です。審理の結果、拒絶理由が解消されれば特許審決となり、拒絶理由が解消されなければ拒絶審決となります。拒絶審決に対して不服がある場合は、上級審である知財高裁に出訴することができます。

実用新案について

実用新案登録は、特に物の考案(物品の形状、構造又は組合せに係る考案)のみを対象として付与されるものです。特許法のような方法の発明は対象とされません。

実用新案権

実用新案法では、ライフサイクルが比較的短い製品等に対して早期に権利を付与するために、特許法のような審査請求制度を採用せず、無審査登録制度を採用しています。すなわち、出願すれば、先に同じ考案について既に出願があったり登録がされたりしていても、そのまま登録されて実用新案権が発生します(実用新案法14条第2項)。

存続期間 実用新案権の存続期間は、出願日から10年です(実用新案法15条)。
権利行使の条件 無審査登録による権利の濫用を防ぐために、実用新案について権利行使を行う場合、一定の条件があります。
まず、実用新案についての技術的な評価(実体的要件を満たすかどうか)を改めて特許庁に請求する必要があります(実用新案法12条)。
そして、技術評価書における評価が権利の有効性を認めたものである場合にのみ、他人に対してその技術評価書を提示して警告し、権利行使をすることができます(実用新案法29条の2)。