パテントコラム

2017年4月

【Topic.1】トンボの消しゴム・セブンの看板 「色だけ商標」2件登録 特許庁

(2017年3月2日 日本経済新聞)

「特許庁は1日、文字などがない『色だけの商標』を初めて認めた。トンボ鉛筆の消しゴムとセブン-イレブン・ジャパンの店舗や商品に使われる色の組み合わせを、商標として認めた。これまで文字や図形に加え音やホログラムなども、商標として認められていたが、色だけで商標登録されたのは初めて。企業のブランド戦略を支援する。」とのことです。
商標登録されたのは、トンボ鉛筆の消しゴムのケースに使われる「青・白・黒」の3色の組み合わせと、コンビニのセブンイレブンの看板等に使用されている「白・オレンジ・緑・赤」の組み合わせで、ご覧になれば「ああ、あれか」と納得されると思います。これらは何れも30年以上の使用を主張、立証していわゆる「使用による顕著性」が認められて登録となったもので、このような色だけの商標がまず登録されないのは変わりがありません。

【Topic.2】フランク・ミュラーと訴訟 フランク三浦の勝訴確定 商標巡り最高裁決定

(2017年3月7日 日本経済新聞)

「スイスの高級時計ブランド『フランク・ミュラー』を連想させる腕時計『フランク三浦』の商標が有効かどうかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は6日までに、フランク・ミュラー側の上告を退ける決定をした。2日付。フランク三浦の製造販売会社(大阪市)が勝訴した知的財産高裁判決が確定した。」とのことです。
結局外見が異なる上、金額にも大きな開きがあることから、混同されるおそれがないとして「フランク三浦」の商標登録の無効審決が取り消されたものです。私も最高裁の決定には同意で、このケースでは混同は生じないと思います。個人的にはこのような明らかなパロディー商品についてはもっと寛容であっても良いと考えています。以前あったお菓子の「白い恋人」と「面白い恋人」との係争でも、石屋製菓(白い恋人)と吉本興業(面白い恋人)とが組んで両方の商品の詰め合わせ「二人の恋人」を販売するぐらいの商魂というか懐の深さを見せて欲しかった、と思っています。

【Topic.3】ビッグデータ 知財として保護 登録・活用へ法整備

(2017年3月12日 日本経済新聞)

「政府は、自動車の走行記録や携帯電話の位置情報などのビッグデータを知的財産として保護する方針を固めた。企業などが集めたデータを登録する制度をつくり、不正利用を差し止められるようにすることを検討する。データを有効活用する環境を整え、新産業の創出につなげる狙いだ。」とのことです。
不正競争防止法の改正案として盛り込まれ、第三者に周知できる仕組みにもなるようですが、個人情報を含むものは対象とされません。しかし、企業が有するデータには、個人情報を含むものが結構あると思われますので、データの保護自体に加えて個人情報の漏洩にならないようなチェック体制も必要と考えます。

【Topic.4】特許侵害 立証容易に 証拠候補の文書やデータ 弁理士などが下調べ 法改正案、来年通常国会に

(2017年3月16日 日本経済新聞)

「特許庁は特許訴訟で訴えた側の企業が侵害を立証しやすくなるような新たな枠組みを作る。裁判所が証拠になりそうな文書の提出を訴えられた企業に命じるかどうかを決める際、弁理士などの専門家がその企業内の文書を『下調べ』できるようにする。来年の通常国会に特許法改正案を提出する方針だ。」とのことです。
技術の専門家でない裁判所が文書提出命令に慎重であったことを踏まえて、この下調べ制度の導入によって裁判所が文書提出命令を出しやすくする狙いもあるようです。なお、下調べできる専門家は、係争にかかわる弁護士や弁理士ではなく、「秘密保持の義務を課された公正・中立な第三者の技術専門家」が想定されています。

【Topic.5】その他 意匠審査基準の改訂について

本年3月31日に意匠審査基準が改訂されました。大きな改訂は、意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続の簡略化です。
従来は、公開した事実の証明について、公開日等が示された刊行物等の具体的な証拠の提出や第三者による証明書の提出が必要であったところ、特許出願の場合と同様に、第三者によらず出願人自身が署名・捺印した「証明する書面」であっても、一定の証明力があるものとして認められることになりました。但し、「証明する書面」には意匠の写真等を添付して公開意匠の内容を示す必要があります。
この改訂審査基準は、平成29年4月1日以降に審査される意匠登録出願に適用されます。証明書の書式等、改訂審査基準の内容は、特許庁HPの「ホーム > 制度・手続 > 法令・基準 > 基準・便覧・ガイドライン > 意匠 > 意匠審査基準 > 意匠審査基準の改訂について > 意匠制度の利便性向上に係る意匠審査基準の改訂について」でご確認下さい。