パテントコラム

2017年8月

【Topic.1】経産省、ブランドデザイン保護の拡充へ

(2017年7月5日 日本経済新聞)

経済産業省は、デザインで産業競争力を高めることを意図して、デザイン振興を進める国家戦略の制定や、ブランドの象徴的なデザインを包括的に保護するための意匠法の改正等を含めた総合対策を打ち出すようです。
アップル社(米国)やダイソン社(英国)等のデザインによって製品の魅力を増大させている企業が日本には少ないとの考えから、デザイン振興によって日本企業のブランド価値の向上を後押ししたい意向のようです。
意匠法改正の具体案としては、たとえばアップル社のiPhoneシリーズのように同一シリーズの製品デザインを一つの出願で包括的に保護できる制度の導入を検討するようです。
そして、2019年度の法改正を視野に入れて、2018年3月までに具体策を盛り込んだ報告書をまとめることのことです。
また、総合対策の策定に当たっては、上述した意匠法の改正とは別に、スターバックスの店舗のようなブランド価値の向上に寄与し得る特徴的な店舗のデザインを知的財産権の保護対象にすることの可否についても検討するようです。
先頃、ブランドファイナンス社(英国)が発表した「ブランドファイナンスGlobal 500」(世界の各分野で活躍する企業のブランド価値を数値化してランキングにしたもの)では、日本の企業は、残念ながらトップ10内に一つも入っていませんでした。
今回のブランドデザイン保護の総合対策が、日本の企業のブランド価値の向上に一躍を担うものとなることを期待します。

【Topic.2】ビッグデータ、不競法の保護対象に

(2017年7月28日 日本経済新聞)

経済産業省は、暗号化やアクセス権の限定等で管理化されたビッグデータを保護対象に追加するように不正競争防止法の改正を行う方針のようです。
この法改正は、IoT*等の普及によりデータの流通が活発化している現状を踏まえ、適正なデータの取得と不正なデータの取得との境界を明確にして、企業がデータを使い易くすることを意図しているようです。
巷ではビッグデータの重要性が高まっており、ビッグデータ自体やそれから派生したサービスが売買されるケースが増えています。ところが、これまでの不正競争防止法では、売買されるデータは営業秘密に該当しないため、不正に取得したデータでも、利用差し止めを求めることは困難でした。
そのため、今回の法改正では、そのような不合理を改めて、たとえ営業秘密でなくても、データが不正に入手された場合には、利用差し止めを求めることを可能にするようです。
また、データの不正入手か否かについては、IDやパスワード設定の有無、専用の回線やアプリによる利用制限の有無等が判断のポイントになるようです。
公正な企業競争こそが国家の真の技術力の向上に寄与すると思います。情報関連技術の進歩のスピードに合ったタイムリーな法整備によって、公正な企業競争を促して欲しいと思います。

IoT*:色々なものをインターネットに繋ぐ技術