2018年5月
【Topic.1】ユニットシェルフ事件・控訴審判決
昨年9月の便りで当事務所弁理士の上田が一審判決を紹介しましたユニットシェルフ事件(一審:東京地裁平成28年(ワ)第25472号,(株)良品計画対(株)カインズ)の二審判決が、本年3月29日に出たとのことです(二審:知財高裁平成29年(ネ)第10083号)。
本事件は、無印良品を展開する良品計画が、カインズで販売するユニットシェルフが無印良品で販売するユニットシェルフと形態が同一又は類似であるとして、不正競争防止法2条1項1号に基づきカインズのユニットシェルフの販売等の差し止め及び廃棄を求めた事案です。
一審判決では、無印良品のユニットシェルフについて、組立て式の棚として、側面の帆立(商品形態①)、棚板の配置(商品形態③)、背側のクロスバー(商品形態④)が特定の形態を有するほか、帆立の支柱が直径の細い棒材を2本束ねたものであるという特徴的な形態(商品形態②)を有し、また直径の細い棒材からなる帆立の横桟及びクロスバー(商品形態⑤)も特定の形態を有するもので、それらを全て組合せ、かつ、全体として、上記の要素のみから構成される骨組み様の外観を有するもの(商品形態⑥)であるとしました。そして、このような商品形態は商品全体にわたり、商品を見た際に商品形態①~⑥の全てが視覚的に認識されるものであって、商品の形態的特徴として商品形態①~⑥が組み合わされた商品形態が他の同種商品と識別し得る顕著な特徴を有するものであるとされました。更に、かような商品形態が周知であり、当該商品形態とほぼ全部において同一であるカインズのユニットシェルフは混同を生じさせることも認定され、良品計画の請求が認容され、カインズは敗訴となりました。
これに対しカインズにより控訴がなされ、この度の控訴審判決に至ります。控訴審判決では、控訴棄却となり、一審判決が全面的に支持されました。
控訴審判決において、控訴人(カインズ)は、被控訴人(良品計画)の商品形態のうち、原判決が特徴的部分であると認定した2本ポール構造、横桟及びクロスバーは、競争上似ざるを得ない形態であり、商品等表示には該当しないと主張しました。しかし、控訴審は、被控訴人商品形態は、商品形態①ないし⑥を全て組み合わせた点において特徴付けられるものであるから、各要素を個別に取り上げて論ずるにすぎない控訴人の上記主張は,失当であるとし、更に、競争上似ざるを得ない形態とは、技術的制約その他の理由により、市場において商品として競合するためには似ざるを得ないものをいうと解されるところ、控訴人が主張する2本ポール構造、横桟及びクロスバーの機能を果たす形態としては、他の形態も多数存在することが認められるから、上記特徴的部分は、技術的制約その他の理由により、市場において商品として競合するためには似ざるを得ないものとは到底いえない、としました。
以下私見ですが、一見シンプルな商品であっても、詳細に観察すれば他の商品にない特徴を複数の組合せで有している場合に、それら特徴の組合せまで取り入れて新商品を出してしまうことは、当該シンプルな商品が有名である際には、不正競争防止法の観点から避けるべきであると思料いたします。又、「競争上似ざるを得ない形態」、即ち技術的制約その他の理由により、市場において商品として競合するためには似ざるを得ない形態、の自己判断は、特に有名な商品の形態でもある場合には、慎重に行うべきであると思料いたします。
【Topic.2】特許情報プラットフォームの拡充
ご存じの方も多いかと存じますが、特許情報プラットフォームが拡充され、「テキスト検索」可能な国や期間が増えたり、外国文献の英文検索が可能となったりしております。
日本経済新聞の記事では、「特許情報プラットフォーム」や「J-PlatPat」の用語は出てこず、特許庁による特許文献の無料のデータベースというように紹介されているところが、一般的な分かり易さの観点から流石であると思料いたしました。