パテントコラム

2018年6月

【Topic.1】ゲーム業界 特許訴訟合戦

(2018年4月18日 日本経済新聞)

近年、大手ゲーム会社間での訴訟事件が多発しています。任天堂がコロプラを訴えた事件については2月に紹介したばかりですが、その他にもグリーVSスーパーセル、カプコンVSコーエーなどが特許権侵害で現在争っているようです。
その背景には、「釣りゲーム」でグリーがDeNAを著作権侵害で訴えたものの、ゲーム画面のつくりには著作物性がなくアイデアに過ぎないとしてグリーが敗訴したことにあるとも言われています。そのため、各社は著作権に加えて積極的に特許出願を行うようになり、その結果、あふれた特許権によって侵害事件が生じやすくなったのです。
訴訟の影響を受けてお気に入りだったゲームが差し止められたり、機能に制限がかけられたりすることになれば、ファン離れに拍車をかけることになり、一兆円市場とも言われるスマホゲーム業界の成長が鈍ることになるのではないかと心配されています。

【Topic.2】欧州単一特許 年末にも

(2018年4月23日 日本経済新聞)

現在の欧州特許制度は、欧州特許庁に特許出願をした場合、その権利化は国ごとにしなければならないことになっています。そのため、国が増えれば維持費が膨らみますし、侵害訴訟も国ごとに行わなければならないなど、その非効率性が指摘されています。
かかる問題を解消すべく、欧州では「単一特許制度」が2018年末に向けて導入される動きがあります。この新制度によりますと、欧州特許庁に登録された特許は26の参加国で効力を持つことになります。そのため、現在の制度に比べてその維持費は大幅に下がることになります。また、特許訴訟については、一元的に対応する統一裁判所の創設によって処理されることになります。
この新制度の創設は、特許コストの削減を目指す日本企業にとって都合が良いものである反面、広域で特許権を取得した企業から侵害訴訟を受けやすくなることが予想されます。とりわけ一度に巨額の賠償金を手にできる可能性があるため、パテントトロール(賠償金の獲得を目的として保有特許で他社を訴える企業等)の横行を助長することになるのではないかと心配されています。これまでパテントトロールの問題は米国が中心でしたが、その規制が厳しくなるにつれ主戦場が欧州に移ってきていると言われていますので、新制度の創設にあたっては、トロール対策も同時に強化する必要があるかと思われます。