パテントコラム

2021年8月

【Topic.1】著作物 一括で権利処理

(2021年7月13日 日本経済新聞)

7月13日に知的財産戦略本部会合が開催され「知的財産推進計画2021~コロナ後のデジタル・グリーン競争を勝ち抜く無形資産強化戦略~」が決定されました。この新聞記事は、同計画6項目の中の一つとして「デジタル時代に適合したコンテンツ戦略」について紹介したもので、その内容は、著作権管理団体に委託していない人のコンテンツを一元的に権利処理できるようにして利用者の負担を軽減していきたい、というものです。その背景には、SNS等を通じたアマチュアによる動画・画像の投稿が盛んに行われるようになった現在、それを如何に保護しつつ再利用し易い制度にするかを整備する必要がでてきたことにあります。確かに、著作権管理団体に委託しているプロのクリエイターが個別分野毎に固有の流通経路を通じてやりとりしていた一昔前とは状況が全然違ってきています。今後は、分野ごとに集中管理団体(例えば音楽分野ならJASRACなど)が、委託を受けていない著作物についても窓口になれるよう検討を進めていき、来年度以降の著作権法の改正を目指しているとのことです。

【Topic.2】新興勢、知財戦略に軸足

(2021年7月21日 日本経済新聞)

日経新聞社の調査によると、有力スタートアップの上位50社の出願が19年比で7割増になっているようです(スタートアップ:イノベーションを起こして短期間のうちに圧倒的な成長率で事業を展開する企業の総称)。スタートアップの経営において、コロナ禍での成長には知財戦略が不可欠という意識が高まっていると言われています。AIを活用したビデオ会議ソフトや、ドローン技術の開発など、スタートアップが持つ新しい技術やアイデアは、コロナ禍での社会改革に極めて有用なものとなり得ます。しかし、スタートアップには人材や資金に余裕のない場合も多く、そのような企業が大手との市場競争を避けつつ収益を上げるためには、業界に不可欠な知財を持つ企業を目指し、ライセンス供与を通じて知財を積極的に活用した経営が必要となります。

このようなスタートアップを支援する取り組みも広がっているとのことで、特許庁と経済産業省は、大企業と不利な契約を結ばされるのを防ぐための「モデル契約書」を業種ごとに公表したり、特許出願の審査を1カ月弱で行う制度を整えたりしています。スタートアップに対しては、ポストコロナを見据えて、多方面からの支援が今後も必要になるものと思われます。