パテントコラム

2021年10月

【Topic.1】中小、知財ミックスで稼ぐ

(2021年9月17日 日本経済新聞)

「中小企業の間で特許に商標などを組み合わせた『知財ミックス』戦略が広がっている。自社技術を権利化するだけでなく、商標でブランド化して顧客に売り込む」として「特許×商標で脱・下請け」の副題のもとで、これまで特許で自社技術の権利を守る知財戦略を取ってきた中小企業も商標を取得することで、技術のブランド戦略が可能になるとして、数件の実例が紹介されています。具体的には、食材の鮮度を保つ装置に関して特許を所有する企業が、装置や加工食品などについて「DENBA+」の商標権を取得し、ブランドにより認知度を高めて製品販促に生かしている例をはじめ、特殊塗装技術の名称「ゼロ・クリア」を、その技術を施した一般向け製品についても使用し、知名度を上げた例が紹介されています。

知財ミックスは、同じ知的財産について特許、意匠、商標によって多面的な保護を図り、、経営資源としての知的財産を複合的かつ有機的に活用することとして注目されています。中小企業が優れた自社技術を特許だけでなく、意匠の保護や、製品について商標権の取得も検討し、知財を総合的に活用することが、今後の企業の発展に寄与するものと思います。

【Topic.2】知財訴訟責める中国勢

(2021年9月20日 日本経済新聞)

中国において「中国企業が知的財産権の権利侵害で、外国企業を訴える例が目立ち始めた。特許法等の知的関連の法改正が進み、賠償が高額化。知財保護に熱心な企業も増え、2020年の関連訴訟の件数は16年の3倍以上になった」とのことです。

中国特許庁のサイト(CNIPO)やWIPO 掲載の近年の出願統計を見ると、中国特許庁への特許出願件数中90%近くは中国在住の者からの出願であり、また商標についても約95%が中国在住者の出願です。中国企業の技術力も年々向上すると共に、知的財産権に対する意識も高まり、外国企業に比して多くの出願がなされ、権利化されてきています。さらには知的財産の法令が強化され、たとえば近年の改正では、侵害における損害賠償額の上限の引き上げ、悪質な権利侵害に関する賠償額の上限を被害額の最大5倍にする「懲罰的賠償」の導入、原告の証拠収集負担の軽減など、原告側の訴訟メリットが増える改正がなされています。これまで中国企業による権利侵害防止策に注意が払われていましたが、今後は訴えられる可能性についても留意する必要がありそうです。