2022年11月
【Topic.1】営業秘密漏洩リスク増 大転職時代、問われる管理
回転すし店「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト社長が、不正競争防止法違反の疑いで逮捕された、との記事が掲載されました。記事によると、転職前に在籍していた「はま寿司」の仕入れ情報を不正に持ち出した疑いがある、とのことです。企業が秘密として管理する技術や営業の情報は、一般的に「営業秘密」と呼ばれますが、不正競争防止法では、「営業秘密」を、①秘密として管理され、②事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、③公然と知られていないもの、と定義づけ、営業秘密の不正取得、使用、開示などを不正競争行為としています。営業秘密侵害については刑事罰も導入され 罰則引き上げなどの法改正もされていますが、その背景の一つに雇用の流動化がある、と記事は述べています。長く続いた終身雇用制度が変化してきていますが、依然として企業における営業秘密に該当する情報の範囲が曖昧であり、危機意識が充分ではない企業も多いようですが、従業員との秘密保持契約締結をはじめ、機密情報管理の強化を図る企業もあることを記事では紹介しています。
【Topic.2】生徒の演奏、著作料不要 音楽教室から徴収 最高裁も認めず
「音楽教室のレッスンでの楽曲演奏が、日本音楽著作権協会(JASRAC)による著作権使用料の徴収対象になるのかが争われた訴訟の上告判決で、最高裁第一小法廷(深山拓也裁判長)は、24日JASRAC側の上告を棄却した。教師の演奏に対する著作権使用料の徴収を認める一方、生徒の演奏は徴収対象にならないとした二審の知財高裁判決が確定した」との報道がありました。本件は、音楽教室における教師と生徒の演奏が、著作権法第22条で定める「演奏権(著作者が、その著作物を、公衆に直接聞かせることを目的として演奏する専有権)」の侵害に該当するかについて争われた案件ですが、一審(東京地裁)では、音楽教室での教師と生徒の演奏がともに著作権使用料の徴収対象になるとした一方、二審の知財高裁では、教師の演奏は徴収対象としつつ、生徒は自らの演奏技術向上のために自主的に演奏している」として生徒の演奏に徴収権は及ばないとの判決がなされました。この二審判決に対し、生徒の演奏にも著作権が及ぶかどうかについての判断を求めて最高裁に上告がなされ、最高裁は、「生徒の演奏は、教師から技術の教授を受けて習得し、その向上を図ることが目的で、楽曲の演奏はその手段にすぎない」として生徒の演奏に対し、JASRACが音楽教室から使用料を取ることはできない、と判示しました。一方、教師の演奏については、著作権使用料の対象となるとの二審判決が確定しました。
民間の音楽教室での教師の演奏には著作権が及ぶ点、一方生徒の演奏には著作権が及ばない点について、5年にわたって争われてきましたが、一応の決着がついたようです。
判決文は次のサイトから見ることができます。
091473_hanrei.pdf (courts.go.jp)