パテントコラム

2023年2月

【Topic.1】模倣行為の差し止め請求権、メタバースも対象へ 知的財産の改正法案

(2023年1月17日 朝日新聞デジタル)

「政府が23日召集の通常国会に提出する知的財産関連の改正法案の概要が判明した。インターネット上の仮想空間『メタバース』での模倣品の販売などについても、不正競争行為の対象として差し止め請求を認める。」とのことです。
仮想空間で分身(アバター)が身につける衣服等の取引が行われており、有名ブランドのデザインと酷似した模倣品が出回っている現状を踏まえて、現行法でカバーできなかった仮想空間上での「商品形態の模倣行為」を差し止め請求の対象とするものです。同じことは登録意匠についても言えますので、将来的には意匠権についても保護の拡大が検討されるようです。
なお、改正法案では、商標に含まれる氏名に周知性がなければ、創業者やデザイナーらが自分の氏名を商標登録できるようにする法案も盛り込まれています。

【Topic.2】「AIを発明者として特許出願」 米国人開発者が特許庁を相手取って訴訟

(2023年1月6日 東亜日報(韓国))

「5日、特許庁によると、米国人のAI開発者・スティーブン・テイラー氏は昨年末、韓国特許庁を相手取って韓国裁判所に行政訴訟を起こした。特許庁がAIを発明者として記載した特許出願を受け入れなかったため、訴訟を起こしたのだ。(中略)しかし特許庁は昨年9月、特許出願者を『発明をした人、またはその承継人』と定めた特許法条項(第33条1項)を根拠に無効処分を下した。」とのことです。
これは「DABUS」という名前の人工知能を発明者として表示した国際特許出願に基づく訴訟で、アメリカやオーストラリアでも争われていましたが、同様にAIを発明者として認めない判断がなされています。ただ、ドイツの連邦特許裁判所は昨年3月、自然人だけを発明者として認めつつ、AIに関する情報を一緒に記載することは許可したそうです。
各国の現行法が発明者を「自然人」のみと規定している以上、当然の結果ですが、「AI」が自然人には「容易に想到できない」技術的思想を導き出す場合もありますので、例えば自然人とのペアであれば発明者と認める、といった改正が将来的になされるかも知れません。

【Topic.3】知的財産リスク 調査で補償額増 損保ジャパン

(2023年1月20日 日本経済新聞)

「損害保険ジャパンは1月から、知的財産の侵害リスクを調査した企業向けに、知財の侵害で訴えられた際のリスクを補償する保険の補償額を10%引き上げる。自社がもつ知財が第三者の特許などを侵害するリスクを把握してもらい、対策を促す。無形資産など知財の価値が高まっていることに対応する。」とのことです。
調査は東京都港区のNGB株式会社が専任するようで、同社が提供する調査を3年以内に受けた企業が対象となっています。例えば保険料3000万円を支払う企業が調査を受けた場合、補償額は10億円から11億円に引き上げられるそうです。なお、調査費用は40万円~70万円となっています。