2023年5月
【Topic.1】特許法の運用が一部変更
令和5年4月1日から特許法等の一部を改正する法律が施行され、期間徒過後の手続の救済要件が緩和されました。今までも特許法等では一定の手続について「正当な理由があること」を条件として、期間を徒過した場合であっても手続の救済を認めてきました。しかし、「うっかり忘れてしまった」とか「期限を間違えていた」などの理由は「正当な理由」とは認められず、救済を受けることはできませんでした。これが今回の改正により「故意によるものでないこと」という要件に緩和されることになりましたので、失念や誤解といった期限徒過は救われる可能性があります。とは言え、出願人側は「失念」したことを立証するのは難しいでしょうし、特許庁側も出願人の「故意」であることを立証するのは難しいでしょうから、揉めるケースも今後は出てくることが予想されます。我々代理人は、期限管理を徹底して行っていますのでこの改正によって何も変わることはないと言いたいところですが、正直申し上げて少し安堵しているところもあります。ただし、回復は無料ではありません。特許は212,100円、商標は86,400円など、相当な回復手数料を取られますし、上記のように揉める可能性もありますので、故意でなく期限を徒過してしまうようなことは決してあってはならないと改めて気を引き締めたいと思います。
【Topic.2】「双日」本社を捜索
4月26日の日経新聞に営業秘密の漏洩に関する二つの記事が掲載されていました。一つは、大手総合商社「双日」の社員が別の総合商社から転職してきた時に、営業秘密を不正に持ち出した疑いがあるとして「双日」の本社が家宅捜査を受けた、という記事です。もう一つは、「かっぱ寿司」の元社長が、前職の「はま寿司」から内部データを不正に持ち出した不正競争防止法違反事件において検察が懲役4年を求刑した、という記事です。営業秘密の侵害事件は近年増加の傾向にあり、2022年の摘発件数(29件)は、2013年(5件)に比べて6倍近い水準にあるということで、その背景には、国内の転職市場の活性化があるのではないかと日経新聞は分析しています。情報処理推進機構が行った営業秘密の漏洩実態を調べたアンケート調査では、「中途退職者による漏洩」が36.3%で流出ルートしては最も多かったことから、退職する従業員が持つ情報の管理徹底が課題である、としています。