2023年9月
【Topic.1】立体商標、10年で最多
近年、立体商標の登録件数が増加しており、2022年は過去10年で最多の202件が登録になっているという記事が掲載されていました。その要因は、特許庁の審査体制の強化にあるとされていますが、確かに、商標出願の審査の期間は、数年前まで1年かかっていたものが、最近は半年程度にまで短縮されてきましたので、処理件数の増加により全体的に商標登録の件数は増えているのだと思います。
また、この記事では、6月にカシオ計算機の腕時計「G-SHOCK」の形状が、文字を含まない腕時計自体の形状として初めて登録されたことが紹介されていました。文字を含まない立体形状でも、早稲田大学の「大隈重信象」や不二家の「ペコちゃん」のように、指定商品・指定役務とは関係ない立体形状の登録と、指定商品そのものの立体形状の登録とでは、その難易度は大きく異なります。後者の場合は、その立体形状を見ただけで、あそこの商品だと認識できるだけの顕著性が要求されるためです。顕著性の証明を伴う立体形状の出願手続は大変な作業ですが、登録に成功すれば模倣品対策には絶大な効果を発揮しますので、その価値は十分にあると思います。
【Topic.2】商標登録「アマゾン効果」
アマゾンは、出品者がブランド名をアマゾンに登録しておくと、悪質な出品を検知した場合に出品者に知らせてくれたり、模倣品被害の対応を迅速にアマゾンに求められたりする「ブランドレジストリ」という知財保護の仕組みをとっています。ブランドレジストリを利用するためには、商標登録を取ることが条件なのですが、アマゾンのブランド保護のルールと、日本の法律との間にはズレがあるので注意が必要、というのが記事の概要です。つまり、商標の取得によりブランドレジストリには登録できたとしても、権利行使の局面では、間違った指定商品で権利を取得したのでは法的に商標が保護されず、裁判で不利になる場合があることを記事は指摘しています。
弊所にも依頼者を通じてアマゾンのブランドレジストリから登録の照会を求めるメールが届くことがあります。これらは弊所弁理士が代理した案件なので保護のズレという問題はないはずですが、自身で商標出願をしたケースなどでは、確かにそういう問題は十分にあり得る話かと思いますので、心配な方は専門家に相談されることをお勧めします。