パテントコラム

2023年10月

【Topic.1】AI特許、審査体制4倍 自動運転や製薬、出願増

(2023年9月21日 日本経済新聞)

「特許庁は10月に人工知能(AI)に関する特許の専門官を現在の10人から40人と4倍に増やす。ロボットやバイオなどの各審査室に1人ずつ配置する。これまでは1人もいない室もあった。生成AIの普及などで増加が見込まれる関連の出願に対応する。」とのことです。
2020年のAI関連の特許出願が、2015年に比べて4倍の5745件に拡大して増加傾向となっていることへの対策のようです。また、集まったAI関連出願の知見を整理して、今年度中に審査事例を公表する予定もあるそうです。
4倍といっても元が10人とのことで、そもそもそんなに少なかったのかと意外ですが、AI関連の審査は他の分野よりも時間が掛かりそうなので、今後出願数が増加すると4倍では追いつかなくなるかも知れません。

【Topic.2】「ガンプラバトル」ついに実現か バンダイが出願した特許が話題に

(2023年9月19日 ITmedia)

「特許庁が9月14日に公開した公報により、バンダイが『ガンプラバトル』向けの3Dスキャンシステムの特許申請を行っていたことが分かった。ファンの間で『ついに実現か』などと話題になっている。」とのことです。
この公報は、9月14日公開の特開2023-129406だと思われます。確かにこの公報には、三次元スキャナ装置で取得された物品の外観のスキャン情報から、仮想空間上で利用可能な仮想空間用データを生成する情報処理装置、その仮想空間用データを用いて仮想空間上に表示される画像の生成を行う画像処理装置等の発明が記載されています。また、図面には、ガンダム似のモビルスーツの図も記載されています。
この出願は審査請求前ですが、本件は分割出願で、親出願は既に特許(特許第7297960号)となっています。分割出願は親出願と同じ内容となっており、今後補正されることになると思います。興味がある方はJplatから公報をご覧下さい。
なお、これに関連してバンダイは、10月に「ガンダムメタバースプロジェクト」と銘打って、各種のガンプラが展示されるメタバース空間をライブカメラで体験できるサイトを開設していました(既に終了)が、同サイトから3Dデータが盗用されているとの情報がネット上で出回り、同サイトではデータのダウンロードが一時的に停止される処置がなされていました。本当であればバンダイですらもそんなに脇が甘いのかと驚きです。

【Topic.3】申請手続のデジタル化について

(2023年9月20日 特許庁HP)

特許庁では、今後急速に発展するデジタル社会への対応、行政手続のさらなる利便性向上を目的として、従来電子申請ができなかった申請書類の一部について電子申請を可能とする新たな機能をインターネット出願ソフトに追加する予定となっています。システムリリースは令和6年1月予定ですが、実際のサービス開始は、関係法令が公布された令和5年6月14日から9カ月以内となっていますので、遅くとも令和6年3月には施行されることになると思われます。

新たに電子申請が可能となるのは、主に、

  • 出願関連(国内)では、委任状、譲渡証書等提出のための手続補足書・手続補正書の提出や優先権証明書提出書・新規性の喪失の例外証明書等
  • PCT関連では、手続補正書や国際出願の書類謄本の請求書等の国際出願後の中間手続
  • 移転登録申請関連では、表示変更登録申請や移転登録申請等
  • 審判関連では、無効審判請求書や異議申立書等

となっています。ただ押印が求められている証明書等は、電子署名が必要になるようです。
詳細な申請方法は、電子出願ソフトサポートサイトで本年12月頃に提示されるようですので、ご注意下さい。

なお、現段階で特許庁から提示されている情報は、特許庁HPの
ホーム>制度・手続>法令・施策>施策・取組>申請手続のデジタル化について
から得ることができます。