パテントコラム

2023年11月

【Topic.1】情報管理、増す重要性

(2023年10月19日 日本経済新聞)

18日、転職元の営業秘密を不正取得したとして、元社員が不正競争防止法違反罪で起訴されました。
企業が保管する内部情報が不正に持ち出されるという事件が近年よく報じられています。
その背景には、雇用の流動化が進んでいることがあると考えられ、自社の営業秘密の保護が、企業の大きな課題となっています。
「営業秘密」として不正競争防止法の保護対象に該当するには、①秘密として管理していること(秘密管理性)、②事業などに有用であること(有用性)、③公に知られていないこと(非公知性)の3つの要件を満たす必要があります。
企業ができる対策として、社員に向けた「秘密保持に関する誓約書」を取り入れて、データを持ち出すことに対して心理的な抑止策を講ずるとともに、営業秘密へのアクセス権限を有する人を可能な限り限定するなど物理的な抑止策を進めることが重要となっています。
経済産業省は具体的な対策として、私用のメモリの職場への持ち込みを禁止することや、秘密情報を保管する端末をインターネットに不必要に接続しないといった対策をあげています。
また、従業員に何が営業秘密に該当するかを周知すること、営業秘密情報へのアクセスログを詳細に記録するシステムを導入したりする体制の整備をすること、そして中途採用する人物には転職元の営業秘密を持ち込ませないよう誓約書を書かせること、も有効な対策手段として考えられます。
このような対策をしても、今回起訴された事案のような悪意のある情報流出を完全に防ぐことは難しいのが現状です。持ち出しが発生した場合には、不競法に基づく刑事告訴などを含め厳格に対応することが重要となります。そして、持ち出された情報が、不競法における「営業秘密」と裁判所に認定されるようにするためにも、上記のような対策を行い、日頃から内部情報の管理徹底をすることが重要となっています。