パテントコラム

2024年5月

【Topic.1】「GUZZILLA」の商標登録無効審決取消訴訟-令和4年(行ケ)第10035号

今月は、知的財産に関するニュースとして、産業機械(第7類)に係る登録商標「GUZZILLA」の登録無効審決取消訴訟-令和4年(行ケ)第10035号(令和5年7月19日判決)-について考察します。登録の無効を主張するのは、東宝映画でお馴染みの「ゴジラ」の英語表記である「GODZZILA」を所有し管理している東宝です。

出願した商標が登録になるためには、その商標が他人の先行商標に類似していないことが要件となりますが(商標法4条1項11号)、非類似の商品分野を指定した出願に11号は適用されません。従って「GUZZILLA」と「GODZZILA」とがたとえ類似するとしても東宝の登録商標が第7類の産業機械の商品分野をカバーしていなければ11号の適用はないのです。しかし、先行商標がとても有名な場合には、たとえ違う商品分野でも第三者がその商標を使用すれば、世間一般において商品の出所について混同を生じてしまうかもしれません。それを防ぐべく、著名商標を保護する規定として設けられたのが4条1項15号で「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれのある商標」は登録できないとしています。この「混同」には、両者に一定の取引関係があるかのように誤認を生じさせる広義の混同を含むとされており、商標の類似度、独創性、商品の関連性や需要者等の共通性などを指標として15号への該当性を判断します。
東宝映画に登場する「GODZZILA(ゴジラ)」が有名なのは言うまでもありません(もちろん裁判ではそれを証明しなければなりませんが)。一方、原告(登録無効の取消を請求する側)の登録商標である「GUZZILLA」は「ガジラ」と称呼され、発音は微妙に違うかもしれませんがその外観も相まって類似商標といっていいほど近い関係にあると思います。また「GODZZILA(ゴジラ)」は既成語ではなく独創性のある造語です。第7類の産業機械の商品分野は、映画業界とは関連性が低い場合が多いでしょうが、ゴジラは建物を破壊するイメージがあってか、工事現場の壁面などに東宝のライセンスのもと「ゴジラ」の表示やロゴ等が使用されることがあるそうです。そのような状況であることに加え、もともと原告にはフリーライドの意図があったようにも見えます。原告は、ビル解体現場でコンクリートの圧砕に用いられるクラッシャーやカッターの開発をメインに行っているところ、同社のウェブサイトで怪獣が鉄筋コンクリートに噛み付き粉砕している映像が使われているということですから、そのような事情を総合勘案して、この商標登録は15号に該当するとして請求は棄却(登録無効審決の維持)されました。