パテントコラム

2024年6月

【Topic.1】AI発明、特許認めず 東京地裁『発明者は人間に限定』

(2024年5月17日 日本経済新聞)

「人工知能(AI)が発明した新技術が特許として認められるかどうかが争点となった訴訟があり、東京地裁は16日、知的財産基本法などに照らし『発明者は人間に限られる』として、米国に住む出願者の請求を棄却する判決を言い渡した。中島基至裁判長は一方で、現行法の制定時にAIの発達が想定されていなかったとし、国民的議論で新たな制度設計をすることが相当だと言及した。」とのことです。
この出願に対しては、米国や英国の裁判所でも同様に、AIは発明者として認められないとの判決が既に出されています。
発明者は自然人しか認めない現行法の規定からすると当然の結果ですが、裁判長も指摘しているように、現状では発明の創作の場面でAIが普通に利用されており、現行法との間に乖離があるのは確かですので、今後の議論によって修正が図られることになると思います。

【Topic.2】AIの学習 原則規制せず 知財侵害、利用とは区別 生成創作物『人の発明』 内閣府検討会

(2024年5月29日 日本経済新聞)

「内閣府は28日、生成AI(人工知能)と知的財産保護のあり方を議論する『AI時代の知的財産権検討会』の中間とりまとめを公表した。知財権についてAIに学習させる段階では原則、権利侵害は発生しないと整理した。」とのことです。
先のニュースで出た「国民的議論」の一環になりますが、同検討会では発明の保護のあり方について、創作物にAIを利用した場合、現時点では「人の発明」と結論づけています。利用の程度によってどこまでが人による創作と言えるのかさらなる検討が必要になりそうです。
ただ実際に侵害の問題が生じた場合に、AIを利用した創作物において、その利用が本当に学習段階でとどまっているのか否かを判断できるのか疑問です。

【Topic.3】中国の発明特許審査期間が2025年までに15ヶ月に短縮へ

(2024年5月28日 人民網日本語版)

「国家知的財産権局はこのほど複数の当局と共同で『知的財産権保護制度建設プロジェクト実施案』(以下、『実施案』)を策定した。実施案では、2027年までに知的財産権保護制度及び保護能力現代化建設で実質的な措置を講じ、知的財産権に関する法律・法規をより包括的かつ体系化し、2035年までに知的財産権保護制度及び保護能力現代化をほぼ実現するとしている。新華社が伝えた。」とのことです。
同局の関係責任者によると、2025年までに発明特許の審査期間を15ヶ月に短縮し、商標登録期間を7ヶ月にするそうです。

【Topic.4】特許出願非公開制度について

(特許庁HP)

令和6年5月1日より、経済安全保障推進法に基づいて、特許出願非公開制度が開始されました。この制度は、「特許出願の明細書等に、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が記載されていた場合には、『保全指定』という手続により、出願公開、特許査定及び拒絶査定といった特許手続を留保するもの」(特許庁HP「特許出願非公開制度について」より抜粋)です。該当する場合は外国手段(国際出願も含む)も禁止されます。
この制度で特許出願を非公開にするかどうかの審査は、特許庁による第一次審査と内閣府による保全審査(第二次審査)との二段階に分けて行われます。第一次審査では、特定技術分野に属する発明が記載されている出願が選別され、第二次審査では、特許庁で選別された出願のみが対象となります。第一次審査の結果、保全審査に付されることになった場合、出願の日から3か月以内に、特許庁長官から出願人(代理人がいる場合は代理人)宛に書留郵便で通知されます。よって、この通知が来なければ保全審査に付されなかったことが分かります。第一次審査が行われている間に出願審査請求をして特許審査を受けることは可能です。
審査に係る特定技術分野は、(1)航空機等の偽装・隠蔽技術、(2)武器等に関係する無人航空機・自律制御等の技術、(3)誘導武器等に関する技術、を始めとする(1)~(25)の技術分野となっています。
なお、従来は特許出願を行うとその受領書に優先権証明に係るアクセスコードが自動的に付与されていましたが、本制度の開始に伴い、全ての特許出願について、特許庁における第一次審査に要する最長3か月の間は、アクセスコードが発行されない運用となりました。アクセスコードは、対象となる特許出願が保全審査へ送付されずに第一次審査が終了した時点で、特許庁から随時発行されます。

本制度の詳細をお知りになりたい場合は、特許庁HPの
ホーム>制度・手続>特許>出願>特許出願非公開制度について
をご確認ください。