2024年9月
【Topic.1】「口頭指示でも発注者側責任」中小企業庁 知財トラブルで指針
(2024年8月6日 日本経済新聞)
中小企業庁では、中小企業の知的財産取引の適正化のため、令和3年3月に「知的財産取引に関するガイドライン」の取りまとめを行い、その発表を行いました。その後、知財取引で生ずる問題について中小企業からヒアリングを行う「知財Gメン」を設置し、中小企業の知財取引の実態把握を行ってきました。
実態を探っていく中で、知財訴訟等のリスクをすべて中小企業へ転嫁する可能性がある契約の締結を中小企業側が強いられている事例が数多く確認されてきたそうです。例えば、「乙(下請中小企業)が納入する目的物について、第三者との間に知的財産権等に関する紛争が生じたときは、乙の一切の責任と負担においてこれを処理解決し、甲(発注企業)及びその顧客に損害を及ぼさない。」といった条項が契約に含まれているがために、不正が発覚した場合に中小企業側だけが損害賠償を強いられ、発注した大手企業側は責任を免れるというケースが散見されております。このように、第三者が保有する技術やアイデアなどの知財を含む商品を、大手企業が知財の利用料を払わないまま中小企業に製造の発注をしてしまうと、最終的にそのツケがすべて中小企業に回ってきてしまう可能性があるのです。
中小企業庁では、知財Gメン等を通じてこのような契約の締結事実を発見した場合、これまでも契約の是正の要請や、条項の放棄を取引相手に伝える要請などを行ってきましたが、今後は、書面での契約だけでなく、口頭での指示でも発注側の責任を問えるようにしていく、というのがこの記事の概要です。中小企業庁では、パブリックコメントの結果を踏まえて早ければ9月中にも知財に関する取引の指針を見直し、口頭指示における発注者側の責任について明記していくことにしています。