パテントコラム

2025年5月

【Topic.1】アマゾン3500万円賠償命令/偽造品の申告「調査せず」

(2025年4月26日 日本経済新聞)

東京地裁は、Amazonジャパンに対し、偽造品の出品を放置した責任を認定し、医療機器メーカーへの約3500万円の損害賠償を命じました。判決によると、原告企業たる医療機器メーカーはAmazon上に出品された偽造品について2021年以降、計6回にわたり削除と調査を求めましたが、Amazonは調査や出品停止などの対応を行いませんでした。偽造品の販売元に対しても本人確認をしておらず、出品の継続を許していたといいます。裁判所は、Amazonが商品販売の場を提供するだけでなく、出品者の管理も行っていたことから「違法品の出品を知りながら放置した過失がある」と判断し、賠償責任を認定しました。
Amazon側は、同社が商品の販売主体ではないとして削除対応をしなかったことについても「削除すべき法的義務はない」と主張しましたが、裁判所はこれを退ける形となりました。判決は「出品者による販売であっても、Amazonが販売の仕組み全体を構築し、管理している」とし、責任を免れないと結論づけています。
この判決は、ネット通販を利用する私たち消費者にとっても大きな意味があります。偽造品を本物と信じて購入してしまえば、品質や安全性に問題があるだけでなく、健康被害など重大なリスクもあります。特に医療機器のような専門性の高い商品では、間違いが命に関わる可能性すらあります。出品の場を提供する企業が「出品者の責任」と言い切るのではなく、通報があった時点で調査・対応する姿勢が必要です。
一方で、Amazonのように1日に何百万件もの商品が出品されるプラットフォームでは、全ての出品を事前にチェックするのは現実的に難しく、運営側も相当の負担を強いられています。出品の自由度と安全性のバランスをどう取るかという課題は残ります。今回の判決が契機となり、今後はAIによる偽造品検出や信頼できる出品者の認証制度の強化など、より効果的な仕組みづくりが求められるでしょう。